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再び贅沢な落語会 [日記]

またまた落語会の話題です
高速バスと地下鉄を乗り継いで、大手町落語会『ザさん喬其の二』に行ってきました。
会場は江戸大手町にある読売大手町ホール。
開口一番の他は、柳家さん喬さんの噺をたっぷり四席聴くという贅沢な落語会でした。

ザさん喬 (4).jpg


道灌(どうかん) 柳家小はぜ(前座)
 八五郎が横丁のご隠居の家に遊びに行き、目に留まった絵の説明を聞く。その絵は太田道灌が狩りの帰りに村雨(にわか雨)に逢い、あばら家に蓑(みの:雨具)を借りに来た場面が描かれている。あばら家の娘に道灌公が蓑を貸してくれと言うと、娘は黙って山吹の枝を差し出し引っ込んでしまった。戸惑う道灌公。すると家来が、『七重八重花は咲けども山吹の実のひとつだになきぞ悲しき』という古歌があり、これは『蓑』と『実の』をかけて雨具が無いという断りのことでございましょう。と道灌公に進言する。それを聞いた道灌公は、自分が歌道(かどう)に暗いことを嘆き、その後は精進して立派な歌人になったという。
 さて、折からの雨の中を家に帰った八五郎、自分も『ななえやえ』がやりたくて仕方ない。丁度提灯を借りに来た友達に、提灯ではなく雨具を貸してくれと無理やり言わせる八五郎であるが・・・。

 『七重八重・・・』は「後拾遺集」所載の中務卿・兼明親王の歌です。
登場人物が三人の噺ですが、前座の柳家小はぜさんは、テンポも良く話にめりはりがあって将来楽しみな落語家さんです。

ザさん喬 (1).jpg


鴻池の犬(こうのいけのいぬ) 柳家さん喬
 石町(こくちょう)にある乾物屋の前に「くろ」「ぶち」「しろ」三匹の捨て犬。小僧さんが三匹の面倒をみることになり、小僧さんは特に“くろ”を可愛がる。その後、“くろ”は大阪の豪商である鴻池善衛門方に貰われていき、“ぶち”は大八車(だいはちぐるま)に轢かれて死んでしまう。一匹だけ残り居づらくなった“しろ”は“くろあんちゃん”に逢いに大阪へと旅立つ。途中、伊勢参りの代参を務める「おかげ犬」と桑名まで道連れとなり、無事に大阪に辿り着きます。さて“くろあんちゃん”には会えるのでしょうか。

 『鴻池の犬』は元々大阪の噺で、江戸では『大どこの犬』として演じられていました。『大どこの犬』は大阪には行かないそうです。さん喬さんはこの話に、伊勢参りの代参をする「おかげ犬」を付け加えてロードムービー風な話に仕立てています。犬が主役の珍しい噺です。


死神(しにがみ) 柳家さん喬
 金策に駆け回る男、家に帰ればかみさんに悪態をつかれる始末。その男が道を歩いていると急に死にたくなる。これは死神の仕業で、その男とは深い因縁で結ばれている死神らしい。困っている男に死神は医者をやれと言う。死神曰く、病気で寝込んでいる人間には、必ず枕元か足元のどちらかに死神が付いている。枕元に死神がいる場合にはその人間は寿命でどうしようもないからけっして手を出してはいけない。しかし、足元の場合は呪文で死神を退散させ病人を全快させられるというのだ。その呪文とは「アジャラカモクレンキュウライスオッペケレッツノパッ」。男が死神に教わった通りに呪文を唱え手を二回打つと、なるほど男の前から死神がいなくなった。
 家に帰りかまぼこ板に「いしや」と書き看板を出すと、早速往診の依頼が舞い込む。行ってみると病人の足元に死神がいる。呪文を唱え手を打つと死神は退散し病人は全快。男はこの方法で大金持ちになるが、金というのはすぐになくなってしまうもの。そんな時に限って死神は病人の枕元にいる。ある豪商で主人を助けてくれたら千両出すと言われるが、やはり枕元に死神が座っている。一計を案じた男は病人の布団を180度回す。足元が枕元、枕元が足元に。そこで「アジャラカモクレンキュウライスオッペケレッツノパッ」ポン・ポンとやると死神は退散し、男は大金をせしめることが出来た。
 死神の怒るまいこと。男を地面の下にある洞窟のような場所に連れて行くが、そこには無数の蝋燭が灯っていた。この蝋燭はそれぞれが人間の寿命で、お前は金に目がくらみ、自分の寿命と病人の寿命を取り換えてしまったと聞かされる男であった。

 この噺、演者によって様々な落ちがあります。さん喬さんは、死神は男が約束を反故にすることは先刻ご承知で、すべて計画的に男に呪文を教えたという話の展開から落ちになっていました。


火事息子(かじむすこ) 柳家さん喬
 神田三河町で質屋を営む伊勢屋。ここの若旦那・跡取り息子は子供の頃から火事好きで、町火消しになると言って家を飛び出し勘当になっている。ところが、伊勢屋に出入りの頭が気を利かし回状(かいじょう)を回したために町火消しにはなれずに、旗本管轄の定火消し(じょうびけし)、いわゆる臥煙(がえん)になっているらしい。臥煙というのはならず者の代名詞のようにも使われ、あまり誉められた職業ではない。
 その伊勢屋の近隣で火事がある。左官屋が間に合わないために番頭が慣れぬ手つきで蔵の目塗りをしていると、下帯(褌)に半纏一枚、全身に彫り物を入れた男が猿(ましら)のごとく屋根から屋根を飛び移りやってきて、目塗りの手伝いをしてくれたのであった。
 この男こそが勘当になった若旦那。事情を聞いた主であったが、勘当した息子にお礼など言えないと依怙地になっている。番頭から、あのお方の御蔭でお店の暖簾に傷が付かずにすんだのですからと諭され、家には入りづらく台所の隅で小さくなって待っている息子と対面することになる。

 臥煙になっている息子と対面するところから先がこの噺の眼目です。勘当されていても家のことが心配で駈けつけてきた息子。口では厳しいことを言っているが、実は片時も息子のことを忘れたことは無い主。おかみさんの口を通してそれが語られていきます。さん喬さんの火事息子を初めて生で聴きましたが、眼目の部分では目頭が熱くなりました。



妾馬(めかうま、めかんま) 柳家さん喬 
 粗野な育ちの八五郎。妹の“つる”はしっかりとした利口もので、大名の赤井御門守(あかいごもんのかみ)様に見初められ側室となっている。そんな八五郎に知らせが届く。妹の“つる”がご男子(なんし)を出産、なんとお殿様のお世継ぎだという。目出度いので是非屋敷に来てほしいと招待された八五郎は、大家から羽織袴、草履まで借りて赤井御門守様のお屋敷に出向く。
 お殿様に御目通りした八五郎。初めのうちは緊張してぎこちないのであるが、普段使う言葉で喋るようにお殿様から言われ、また酒も入りだんだん八五郎らしさが見えてくる。気が付くと見違えるような姿になっている妹“つる”もいて、酔いの回った八五郎の独壇場になる。

 将軍家の息女が降嫁(こうか)すると朱塗りの御門を建てたのだそうです。つまり赤井御門守様はそれだけ格式の高い大名だということですね。東大にある赤門は加賀藩のお屋敷でした。
 『妾馬』はお殿様に会うまでの前半は滑稽噺、その後は人情噺です。がさつ者の八五郎に酒が入り本音で語り始めると、意外にも母想いの部分と妹思いの部分が露呈してきて、後味の良い人情話になっていきます。
 大抵の落語家さんは八五郎がお殿と妹に会って上機嫌になるところで噺を終わらせますが、この噺には続きがあって、お殿様に気に入られた八五郎が士分に取り立てられます。そこで、『八五郎出世』として語られる場合もあります。六代目三遊亭圓生さんは、“つる”が見初められ、お殿様のお使いが長屋の大家さんの所にやってくるところから演じていました。

ザさん喬 (2).jpg


 会場の外は少し暑く感じる日でした。会場で、私の右隣に座り夏の和服をお召しになっておられた方は、初めのうちは落語を聞いて本当に明るく笑って居られました。しばらくして、誰もが笑う場面で笑っておられないので見るともなしにしっかり見たら微睡(まどろ)んでいらっしゃいました。

さん喬を聴いて微睡む単衣かな


行く春や半袖もいる落語会






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